前立腺肥大症とは
高齢男性に見られる、排尿障害の最も一般的な原因疾患です。加齢により前立腺が肥大すると共に、全身機能低下も併存することで、夜間頻尿や尿勢不良などの自覚症状が出現します。
前立腺肥大症はいわゆるQOL疾患ですが、加療することで生活満足度の向上を目指すことが可能です。
前立腺とは
前立腺肥大症の原因
一般的に50歳を過ぎた頃より、目立った前立腺の肥大が始まります。加齢に伴うホルモン環境の変化、感染症に起因する慢性炎症、免疫応答の亢進などが原因と考えられています。
前立腺肥大症の検査・診断
前立腺肥大症の検査や診断は、当院で可能です。
超音波検査
前立腺の大きさや形状(膀胱への突出など)を観察します。
尿流測定検査(ウロフロメトリー)
特殊な検査機能のあるトイレで、普段通りに排尿します。尿の勢いや1回量、かかった時間などを計測します。尿量が150ml以上でないと正確な結果が出ないとされていますので、待機時間をお願いすることがあります。
残尿測定検査
排尿直後に超音波を使って計測します。50ml以下が理想的です。自覚症状が乏しくても、残尿量が多い場合には、合併症予防目的で治療をお勧めします。
PSA検査
前立腺がんの腫瘍マーカーとして知られていますが、前立腺体積と正の関連性があります。前立腺がんと前立腺肥大症の鑑別が必要です。
症状質問票
国際前立腺症状スコア(IPSS)とQOLスコアが一般的に使用されます。同じ症状でも、困っているレベルには個人差があります。スコアの重症度に応じて治療を進めていきます。
前立腺肥大症の治療
薬物療法
α1アドレナリン受容体遮断薬またはPDE5阻害薬
推奨グレードAの薬剤です。第一選択となる薬剤群です。排尿に関連する筋肉に働きかけ、緊張を緩めることにより尿道の圧迫を解除します。症状緩和は約3分の2で見られます。
5α還元酵素阻害薬
推奨グレードAの薬剤です。男性ホルモンの働きを抑える薬剤で、前立腺体積をゆっくりと減少させます。約半年後より、有意な体積減少が見られると言われております。PSAを低下させるため、前立腺がんチェックには注意が必要です。
その他
漢方薬などがありますが、推奨グレードC以下の薬剤がほとんどです。
手術療法
内視鏡手術が主流です。内服薬にて充分な効果が得られない場合や、副作用が強く内服継続が困難な場合に検討します。術式は多数ありますが、現在では開腹手術はほとんど行われておりません。必要に応じて関連施設への紹介を致します。
前立腺肥大症の予防?前立腺肥大症は自然に治る?
大量飲酒、感冒薬内服や尿路感染など、症状が急激に悪化するきっかけはよく知られています。しかしながら肥大傾向そのものを止めることは、無治療では困難です。
但し、前立腺肥大症は良性疾患であり、命に関わることはほぼありません。それぞれの自覚症状をどう捉えるかには個人差がありますが、残尿が多い患者様は治療対象となるため、多少の排尿時違和感を感じたら、一度泌尿器科受診をお勧めします。
また、当疾患に勃起障害が併存することがよくあります。逆に、治療を進めることにより射精障害などを生じる可能性があり、充分に病態を理解して頂いた上で治療方針を決めていく必要があります。
前立腺肥大症と性生活
前立腺肥大症の方は、EDを併発しやすいと考えらえています。そもそも、前立腺肥大症もEDも共に、加齢により発症・進行する病気のため、当然との見解があることは事実です。
EDガイドラインでは、「前立腺肥大症とED症状は密接な関係がある」とされています。タダラフィルというED治療薬が、前立腺肥大症による排尿障害を改善する効果もあるというデータに基づいて、2014年より低用量のものが保険適応となっている事実があります。