おしっこをする時の痛み(排尿痛)
排尿痛とは、排尿時に下腹部や尿道に痛みが生じる症状です。
何らかの疾患が原因となり発症し、痛みの場所などによって、推定される原因疾患が異なります。重大な疾患が原因となっていることもあり、排尿痛を放置すると腎不全の危険性などもあります。排尿痛がある場合は早めに受診しましょう。
尿道の痛み
尿道は、膀胱から尿の排出口までの通り道のことで、女性は4cm程度、男性では20cm程度の長さです。
尿道や膀胱、前立腺に炎症が起こると、排尿時に痛みを生じます。
適切な治療のために、原因菌をしっかり見極める必要があります。
下腹部の痛み
下腹部や骨盤内には、膀胱の他に大腸や小腸、男性では前立腺や精嚢、女性では子宮や卵巣など多くの臓器があります。
排尿時に痛みを生じる場合は、膀胱や尿道、前立腺などで炎症を起こしている可能性が高いと考えられますが、排尿時ではなく膀胱に尿が溜まってきた時に、下腹部に痛みを生じることもあります。間質性膀胱炎という疾患によく見られる症状のため、尿が溜まってきただけで痛みが生じる場合は注意が必要です。
下腹部の原因
尿道が痛いケース
細菌の感染によって外傷や炎症がある時に、痛みを生じることがあります。
痛みを生じるタイミングは原因によって異なるため、問診で確認を行います。
尿道炎の場合は排尿し始めた時、尿路結石や膀胱炎の場合は排尿の終わりに痛みが生じます。
排尿時痛のある時に疑われる疾患
急性膀胱炎
排尿時や排尿後にしみる、強い痛みがあるといった症状を起こす疾患です。
痛みの他に、下腹部痛、尿の濁り、頻尿、血尿などを起こすこともあります。
細菌が尿道から膀胱粘膜に侵入することが原因と言われ、身体の冷えや排尿を我慢することも発症の要因になります。特に、女性は尿道が短いため、発症しやすいと言われています。
改善と再発を繰り返して慢性化したり、腎機能障害を併発したりすることもあるため、早めに適切な治療を受ける必要があります。
なお、排尿時ではなく、尿が膀胱に溜まった時点で下腹部に痛みがある場合は、間質性膀胱炎などが考えられます。排尿前に痛みがある場合にも、早めに受診しましょう。
尿路結石
腎臓から尿道までの尿路に尿の成分が固まって結石が生じる疾患です。
結石が膀胱や尿道に移動すると粘膜を傷つけ、排尿痛を引き起こします。
また、排尿痛の他に頻尿、血尿、残尿感、尿の勢いが弱くなる、尿の濁りなどの症状が起こることもあります。
前立腺炎
男性の前立腺は、膀胱の下に尿道を囲むように位置しています。前立腺で炎症などが起こると、排尿に関する様々な症状が現れます。
前立腺炎の主な症状は、尿の出初めの排尿痛、残尿感や頻尿などがあり、悪化すると次第に排尿痛も強くなっていきます。
前立腺肥大症が原因となっていることが多いため、適切な評価や治療を受けるために早めに受診しましょう。
尿道炎
尿道が炎症を起こしている状態で、クラミジアや淋菌による性感染症が原因として多く、大腸菌などの常在菌でも起こることがあります。
女性よりも尿道が長い、男性に多く見られます。
将来的に尿道狭窄が起こり、排尿できなくなる尿閉を起こすこともあります。
クラミジアや淋菌は性感染症であるため、感染が判明した場合にはパートナーの受診も必要になります。
女性の場合は婦人科で検査を受けましょう。
淋病(淋菌感染症)
淋菌に感染することで起こる性感染症です。オーラルセックスで喉に感染することがあります。
尿の出始めに激しい痛みがあり、膿が出ることもあります。
また、女性より男性に症状が現れやすく、女性は自覚症状に乏しい傾向があります。
不妊の原因や母子感染などに繋がることもあるため、放置せず適切な治療を受けることが重要です。
性器クラミジア感染症
クラミジアの感染が原因で発症する性感染症です。
淋病と同じく、オーラルセックスによって喉から感染することがあります。自覚症状に乏しく、感染に気付かないこともあります。
近年では若い女性での感染が増えており、不妊の原因や母子感染の危険性もあるため、将来への影響が危惧されています。
男性の場合も淋菌感染時のように強い症状はなく、尿の白濁や、排尿の出始めにしみるような軽い痛みなどの症状が現れます。
排尿痛の治療
原因によって治療方法が異なります。尿路結石が原因の場合は、痛みを緩和する鎮痛剤を使用した上で、自然排出を目指して適切な水分摂取と適度な運動を行います。
なお、結石が大きい場合などは自然排出が困難なため、手術での治療を検討します。
一方、膀胱炎が痛みの原因の場合は、主に抗菌薬での薬物療法が行われます。
近年では耐性菌が増えているため、尿の培養検査で効果の有無などを確認した上で、有効な抗菌薬を選択していきます。
腎盂腎炎への移行を防ぐため、痛みを感じる場合には、できるだけ早めに泌尿器科を受診しましょう。